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5G が実現するデジタル変革:前編「5G のビジネスインパクト」

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2019年 6月 12日~ 14日、幕張で開催された「Interop Tokyo 2019」において、「5G が実現するデジタル変革」と題した基調講演を行いました。当日はありがたいことに早々に満員御礼、500 名以上の方に熱心に聴講いただき、あらためて 5G への関心の高さを実感する機会となりました。ご来場の皆様には御礼申し上げます。

今回より 2回にわたり、その講演内容をご紹介します。その前編「ビジネスインパクト編」では、5G は消費者だけでなく、むしろ企業のデジタル変革を加速し、企業のインフラのあり方を大きく変える要素であることを、ユースケースと調査データを交えてご紹介します。

いよいよ始まる!5G はあらゆるデジタル変革を加速する

東京 2020 オリンピック・パラリンピックが近づいてきました。そしていま話題の 5G も、この 2019年秋に携帯事業者各社で試行が始まり、2020年春にはサービス開始が予定されています。まさに、東京 2020 大会は 5G のショーケースとなるでしょう。そしてその先に、世の中を変えるサービスがどれだけ誕生してくるのか、とても楽しみです。

いまやデジタル変革はあらゆる産業、企業、事業のテーマとなっています。日本においては労働人口減少という喫緊の課題も加わります。

変革はいつも、ほかの業界からやってきます。

変革は常に「ほかの業界」からやってくる

タクシー業界の UBER、ホテル業界の Airbnb などに代表される「ディスラプター」には、2つの共通した特徴があります。1つは裏側でネットワーク技術を最大限に駆使している、ということと、もう1つは既存の業界の外から登場し、一夜にして市場を席巻するスピード感です。5G は、一段とこのデジタル変革を加速する要素となるでしょう。

業界の垣根を超えた市場動向例

2019年 3月、Google がクラウドゲーム業界への参入を発表しました。これまでのゲーム業界は、ハードウェア、ソフトウェア、周辺機器などのエコシステムが既に構築されており、それが参入障壁と考えられていました。Google は最大 60fps、4K 画質という、5G を前提としたゲーム ストリーミングを予定し、新たなアプローチで異業種からの参入を試みています。

もう一つは、隣接市場における競争事例です。2019年 4月、米国最大手の携帯事業者であるベライゾンは、月額わずか 50ドルで、個人宅に 5G をワイヤレスで提供するサービスを開始し、固定通信回線に代わるサービスとして利用されています。日本はブロードバンド大国と言われますが、プロバイダーや通信事業者、ケーブルテレビなどとの契約と、光ファイバーの敷設が必要です。5G はその様相を一変させるでしょう。これらは 5G がいかに新たなサービス創出や業界のデジタル変革を推進するのか、がよくわかる事例です。

調査データが示す、サービスプロバイダーの収益構造のシフト

こちらはサービスプロバイダー事業者の収益構造のグラフです。

5G は企業のデジタル変革を後押し

今日のサービスプロバイダー事業者の顧客は一般消費者。しかし 5年後には、収益の 50%は企業向けのサービスに代わると予想されます。これは、5G により各業種に特化した企業向けアプリケーションの開発や新たな法人サービスの創出が加速することを示唆しています。

5G がもたらす 3つの新しい価値

5G がもたらす新しい価値は大きく、この 3つとなります。

5Gがもたらす新しい価値

「超高速」、4G の 10倍以上の毎秒 1G通信。「超低遅延」、遅延はこれまでの 1/50 となり、従来のウィークポイントが解消されます。そして「多数同時接続」。人と人だけではなく、車両や機械同士の M2M、IoT のセンサー同士など、現状の 100倍以上の端末接続が実現します。

これらの新しい価値に対して、企業の 5G への期待は高まる一方です。日本の基幹産業である自動車業界は 5G を待望している筆頭と言えるかもしれません。

5Gユースケース: コネクテッドカーとシスコの取り組み

高齢化社会で注目が集まるコネクテッドカーも、5G が切り開くユースケースの 1つです。

5G が切り開くコネクテッド カー

自動運転、無人運転のみならず、生産工程の改革、部品の障害検知から、運転者に対するパーソナライズされた個別サポートの提供や、関連する保険や金融などのサービスも連帯する、新しい社会インフラとしての MaaS(Mobility as a Service )など、自動車業界を 5G は大きく変革します。自動車業界 No.1 企業のトヨタ様でさえ、これからは車を製造する会社ではなく、モビリティにまつわる新たなサービスを提供するモビリティ アズ ア サービス企業に変革されることを標榜されています。

ネットワークの会社と思われているシスコも、今後のコネクテッド カー構想についてのコンソーシアム AECCpopup_icon(Automotive Edge Computing Consortium)に、米国本社、日本法人の合同でボードメンバーとして参加しています。

インフラのアーキテクチャをユースケースも含め議論し、仕様詰めを行っており、今後も周辺のエコシステム構築も含め、貢献したいと考えています。

企業のインフラのあり方が変わる 5G は社内の信頼されるネットワークへ

ここからは、5G が企業に与えるインパクトについて解説します。

背景として、企業のクラウド活用は、2016年の 40%から 2019年では 60%と、大きく伸長しています。また、最新の調査ではおよそ 94%の企業が、業務の一部に複数のクラウド サービスを利用している、というデータもあり、基幹業務のクラウド サービスへの移行は、もはや当たり前となりつつあります。

そしてモバイル ワーカーの増加です。米国の調査では実に社員の 72%がモバイル ワーカーであり、49%の社員はオフィスに出社せず、モバイル端末のみで仕事をしています。「仕事は会社の自席でする」というのは、もう当たり前ではないのです。

企業インフラのあり方が変わる

インフラはクラウド化し、社員は会社にいない。今後、企業のインフラが変化しないわけがありません。これまでの企業インフラは、本社、支店で完結する仕事でしたので、VPN を中心としたプライベートなネットワークが合理的でした。

5G 時代には、これまでの VPN に加えて、Wi-Fi、インターネット、5G によるモバイル通信が融合して、区別されることなく、あらゆるサービスを社員に提供するようになります。現状ではモバイル、携帯通信は業務に活用されていませんが、5G は社内の信頼されるネットワークとして活用されるようになるのです。そして実は 5G は、各企業に向けた仮想ネットワークも構築可能なのです(後述)。

ローカル5Gが企業利用を加速する

企業の 5G 利用を加速するもう 1 つの動きとしては、ローカル 5G があります。総務省が 2019年 4月、周波数の割り当てを決定しました。

ローカル 5G

これまでは携帯事業者のみでしたが、今後は技術的な背景、通信ニーズの多様化、地方創生、地域密着した柔軟なサービス提供などを理由として、一般企業にも自営のための 5G 周波数の割り当てが開始されます。自ら所有する土地や建物内での利用が前提ですが、これまで不特定多数のユーザが共有して不安定だったモバイル通信が、5G では企業の安定した通信インフラとなるのです。

製造現場の IoT/スマート化

IoT では、工場内にあるセンサーや工作機械を、いまは有線で接続しています。今後、需要変動やニーズの多様化に迅速に対応するために、5G が活用されていきます。オフィスの有線 LAN がワイヤレス化し、ワークスタイルの自由度が向上したように、今後は工場から通信ケーブルがなくなります。これは生産ラインなどのレイアウト変更に俊敏性をもたらし、しかもローコストです。

さらに、低遅延な 5G であれば、PLC、制御装置や、MES、制御実行装置などもリモートで運用可能になります。そして場所を越えて複数の工場を連携、中央監視制御や管理が可能になるのです。

ローカル 5G が切り開く製造現場のスマート化

いかがでしょうか。5G がもたらす変革は、単なるモバイルの変革ではなく、企業のインフラのあり方を大きく変える可能性を秘めており、デジタル変革の最大の鍵になると考えています。

次回の後編では、5G 時代に求められるネットワーク アーキテクチャ(設計思想と構成技術)について最新事例を交えてご紹介します!

 

Authors

中川 いち朗

代表執行役員社長

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