ソフトウェアのローカライズは、プロジェクトに最初から組み込まれるのではなく、多くの場合、後から検討されます。2017 年、私たちは東京オフィスで、ソフトウェア フルフィルメントプロセスのローカライズ プロジェクトを開始しました。コマース アプリケーション(発注ポータル)からフルフィルメント プロセスに至るまで、パートナーとエンド カスタマーのユーザ エクスペリエンスを改善したいと、地域を担当するチームから相談を受けたのです。アプリケーションは、一部は日本語化されていましたが、英語版のままのものもありました。
2014 年に、私たちは主要なパートナーと顧客向けアプリケーションのローカライズが含まれる、コーポレート プロジェクトに着手しました。プロジェクトには、多言語データ基盤があったものの、ソフトウェアとプロジェクトの更新が絶えず続くことで、対応に後れを取っていました。さらに、主にローカライズ ユーザ エクスペリエンスについて、シスコのソフトウェア サブスクリプション ビジネス戦略へのパートナーの協力を得るという点に課題を抱えていました。ほとんどのプロジェクトで、ローカライズのサポートは、アプリケーションや新しい機能のリリース後、ずいぶん時間がたってから実施されます。
東京でのプロジェクト以降、私たちは、ローカライズをソフトウェア開発の初期段階に組み入れ、次の 6 つのガイドラインに従っています。
1. 成功を定義する
ローカライズに費やす時間とリソースを定量的に正当化するのは簡単ではありません。主観的な判断になり、評価が難しいからです。東京のプロジェクトでは、以下に従って成功の度合いを測定しました。
- ビジネス側のアプリケーション担当者等複数の関係者がローカライズに関するカスタマイズを変更・対処をすることを可能とすることで、戦略的な自己充足の仕組みを確立する。
- 発注とフルフィルメントのアプリケーション間で、円滑なユーザ エクスペリエンスを実現する。
- ユーザの言語設定を1つの場所に蓄積し、アプリケーション間でそれを共有する。
- 新しいユーザ ストーリーを追加するのと同じようにソフトウェア製品の計画中に新しい言語を簡単に追加できるようにする。
- 市場進出を加速する。
- 国際的な市場で競争上優位に立つ。
2. ローカライズは追加作業ではなく、基礎となる仕事であることを認識する
当初のローカライズの取り組みでは、新しいアプリケーションと機能がリリースされた後で、問題に対処していました。東京のソフトウェアフルフィルメントプロセスを分析したところ、このアプローチでは、顧客への影響やアプリケーションの依存関係を特定するために、実稼働の停止や、リエンジニアリング、そして、リソースの拡大が必要になることが分かりました。ソフトウェア開発の初期段階からローカライズを考慮すれば、こうしたリスクを回避できます。このため、私たちは国際化に対応できるようにアーキテクチャを再設計しました。ウィキペディアによると、国際化(i18N)とは、設計変更なしにさまざまな言語と地域に適応できる、ソフトウェア アプリケーションの設計プロセスを指します。また、ローカライズ(l10N)とは、テキストの翻訳、およびロケール固有のコンポーネントの追加によって、国際化したソフトウェアを特定の地域や言語向けに適合させるプロセスを意味します。
3. 主要な関係者とパートナーを把握する
ローカライズの要件を評価するには、さまざまなバックグラウンドを持つことの多い関係者グループをすべて把握しなければなりません。地域の担当チームは積極的に議論を進めましたが、アプリケーション プラットフォームを所有する、シスコの IT アーキテクチャ フレームワーク チームも、それに参加する必要がありました。関係者として、日本のセールス オペレーションと戦略チーム、本社のビジネス チームと IT チーム、サービス チーム、アーキテクチャ フレームワーク チームといった、多くの人が参加しています。そこで、定めた期間内にローカライズの目標を達成するために、次の対策を講じました。
- その国の市場進出戦略に合ったビジネス成果を検討する。
- アーキテクチャ フレームワーク チームとパートナーシップを確立し、スケーラブルな国際化を可能にする。
- 定期的なチーム ミーティングを計画し、ソフトウェア ビジネス導入を担当するすべてのチームと活発にコラボレーションする。
- ローカライズへの段階的なアプローチを採用し、最も優先度の高いアプリケーションからプロジェクトを始める。
4. 主要な関係者から賛同を得る
ローカライズのプロセスは複雑であり、エンジニアだけでなく、ビジネス リーダーにも深く関わってもらう必要があります。積極的な参加を促すために以下を実施しました。
- レビューに参加して必要な対応を行えるさまざまな関係者を世界中から集め、活動的なチームを作り上げる。
- ダイナミックチームの重要性について上級管理職と定期的に会議をする。
- アプリケーションの国際化(i18N)に対応できるアーキテクチャ再構築チームを作る。
- 異なるタイムゾーンにいるチーム メンバーにとって都合のよい時間に定期ミーティングをスケジュールすることで、ダイナミックチーム コラボレーションを奨励する。
- 期間中にプロジェクトを完了できるように、アプリケーションの依存関係を徹底的に分析する。
5. 機械翻訳とローカライズの違いを理解する
ローカライズとは、既存の Web サイトを単に翻訳することではありません。広く言えば、コンテンツとアプリケーションを地域や現地の消費に適合させることを意味します。このため、場合によっては、ユーザ インターフェイスのフローの修正や、ソース言語(たとえば英語)そのものやその他のサイトの要素などの変更を行い、ユーザの文化的な期待との一致を図る必要があります。
私たちは、ローカライズの品質を確保するために以下を実施しました。
- 異なるユーザ アプリケーション間で、同じユーザ設定を使用できるようにユーザ インターフェイスを調整する。
- 可能なユーザ インターフェイス フローをすべてローカライズする。
- ユーザ インターフェイスのテストをする専門のチームのそれぞれの言語担当者にレビューを依頼する。
- 適切な変更管理を活用して、チーム レビューを実施する。これにより、1つの言語のユーザ インターフェイスの変更で差異が発生し、影響が、コアの(英語版の)ユーザ インターフェイス フローに及ばないようにする。その逆、つまり英語版を変更したことにより多言語への影響が発生することがないようにする。
6. 顧客が理解できる言語で直接語りかける
ここで述べているガイドラインは、構築の対象が、Web サイト、顧客のアプリケーション、パートナー向けのアプリケーションのどれであっても適用できます。Harvard Business Review の調査によると、消費者の 72% が母国語でローカライズされた製品を購入する可能性が高く、56% が、そうした対応を価格よりも重視しています。
現在までの進捗
グローバル化と国際化は、シスコのどの IT プロジェクトでも標準となっています。(図 1)。プロジェクトが完了し、それがローカライズを経ていれば、世界中の顧客を通じてビジネス チャンスを拡大できます。ローカライズしたユーザ インターフェイスによって収集したデータは、データ分析のために明確な可視性を示すことができます。
私たちは、ローカライズがその他の地域でビジネスの優先事項となるよう働きかけています。。こうした取り組みをサポートするために、製品、IT プラットフォーム、テクニカル サポート ドキュメント、およびチャネル プログラムのポートフォリオ全体で、ローカライズのための、戦略的かつ包括的な運用モデルとフレームワークを構築しています。
要約すると、それぞれの国が求めるユーザ エクスペリエンスを提供することにより、競争上の優位性を得られます。そして、多言語をサポートできるアーキテクチャを採用することで、、シスコ ブランド、顧客エンゲージメント、販売に良い影響を及ぼすことができます。Harvard Business Review の記事にあるように、「消費者は、理解できないものを購入しようとは思わない」のです。
1 コメント
Great article, Padmaja, on the importance of localization.