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ShowNet 2017 PTP の相互接続&精度検証レポート

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2017 年 6 月に開催された「Interop Tokyo 2017」は、昨年よりもさらに来場者数が多く、大盛況でした。Interop の醍醐味といえば、各ベンダーが自社製品を持ち寄って相互接続実証を行う ShowNet です。シスコからは、コア製品からキャンパス スイッチ、ワイヤレス、セキュリティ、コラボレーションなど、ネットワーク全体を支える製品を数多く出展しました。今回は、ShowNet のなかで実施された、Cisco ASR 920 による他ベンダーとの PTP(Precision Time Protocol)相互接続検証を紹介します。

PTP は、通信業界/モバイル網の基地局間の位相同期や、金融業界、工業分野など、非常にシビアなタイミングが要求される場所で有効なプロトコルです。例えばモバイル網の基地局間では、同期のソースとして GPS が使用されてきましたが、この場合、基本的にそれぞれのモバイル基地局に 1 台の GPS レシーバが必要となり、GPS を引き込むことができない場所で時刻同期が困難で、すべての基地局への展開が現実的ではありませんでした。そこで、Ethernet/IP パケットベースで時刻同期を行うためのプロトコルが PTP となります。

時刻同期というと NTP(Network Time Protocol)を思い浮かべる方が多いかと思いますが、NTP と PTP では精度が大きく異なります。NTP はミリ秒レベルの時刻同期であるのに対して、PTP はナノ~マイクロ秒レベルの非常に高精度な同期を可能とします。

シスコでは、過去にも 2015 年および 2016 年の ShowNet において、PTP のライブデモ ネットワーク構築に参加してきました。そのネットワークは回を追う毎にチャレンジングなものになっています。

まず 2015 年は、Default Profile/IEEE1588v2、Telecom Profile/ITU-T G.8265.1 のプロトコル相互接続性をメインとした検証を行いました。しかし、一部の機器間での接続性や、精度測定を行うことができていないという課題がありました。それを踏まえ、2016 年では Grand Master の精度スペックをメインに確認し、一定の成果を得ることができました。ただし、Boundary Clock(BC)や Transparent Clock(TC)を適用し、実運用を想定した、機器を多段にした構成での精度測定が未完状態でした。


そして今回は、PTP ノード多段構成の上、各ノードの精度測定をメインとしました。上の図のように BC として 2 台の Cisco ASR 920 が稼動していました。プロトコルについては、初の試みとなる「Time & Phase」同期を行う  Telecom Profile/ITU-T G.8275.1 を採用し、周波数同期を行う SyncE も同時に使用しました。加えて、他社様機器との接続の確立と実運用を想定した負荷印加状態での精度測定を同時に行うという、非常にチャレンジングで貴重な機会が得られました。

PTP は、機器の負荷のような要因だけでなく、衝撃などの物理的な要因にも精度や同期時間が左右されます。昨年は ITU-T G.8265.1 Telecom Profile を使用して同期をしましたが、構成によっては同期するまでに数時間単位の時間がかかることもあり、1 つあたりの試験項目に大きく時間を割く必要がありました。今年は SyncE を使用することで、PTP のみによるパケットベースの同期と比べ、より高精度なだけでなく、収束時間を短縮させることができるため、数分単位での同期を実現できました。

そして、背景負荷をかけた状態でも同期状態を保ちつつ、トラフィック ドロップもなかったため、他社との接続においても実用に耐えうる性能を有することが確認できました。もちろん設定や構成によって結果は左右されますが、ShowNet という場でこのような結果が出たことは、1 つの大きな成果となりました。

今、PTP は「標準化&実装フェーズ」から「導入&Network Engineering フェーズ」に移行しており、PTP を用いた実装も増えていくことが予想されます。PTP の導入をご検討中のお客様は、ぜひシスコの Cisco ASR 920 を候補にお考えいただければと思います!

 

Authors

加治 良亮

システムズエンジニア

グロバール サービス プロバイダー

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