この記事は、製品&ソリューション マーケティング チームのシニア マーケティング マネージャーである Bill Shields によるブログ「Cisco HyperFlex vs. Public Cloud」(2017/4/17)の抄訳です。
昨年末、私はシスコの S3260 ストレージ サーバと Amazon の S3 サービスの比較を行いました。その結果に多くの人々が驚き、ブログに多数のコメントが寄せられました。
このトピックに関する最後の一文をもう一度引用しましょう。それは、オンプレミス アプローチとパブリック クラウド アプローチにはそれぞれ多数の長所と短所があり、それらの要因によって皆さんの意思決定が影響を受ける、というものです。何らかの要因によって一方のオプションが魅力的に映る状況もあれば、別の要因によってもう一方のオプションが魅力的に映る状況もあります。そして、この投稿の目的は単に基本的なコストを明確にすることです。
皆さんが新しいコンピューティング ソリューションへの置き換え、アップグレード、購入を検討しているのであれば、皆さんはおそらく、ハイパーコンバージド インフラストラクチャとパブリック クラウド製品を頭に思い浮かべ、どちらを選べばよいか思い悩んでいるはずです。シスコには、HyperFlex システム(HX シリーズ)というハイパーコンバージド インフラストラクチャ プラットフォームがあります。
私がやりたかったのは、HyperFlex または Amazon の EC2 サービスを使用して高度に仮想化された大規模サーバ環境を構築し、それを 3 年間運用した場合にどの程度のコストがかかるか突き止めることでした。その結果、HyperFlex を使用すれば、コストを 50 % 以上節約できることがわかりました。興味がありますか? では続きをお読みください。
パブリック クラウドの構成
Amazon は、57 種類のインスタンス タイプを提供しています。何人かのシステム アーキテクトやシステム エンジニアと相談した後、この比較にふさわしい汎用 VM として m4.large インスタンス タイプを選びました。Amazon は、このインスタンス タイプを「高レベルの一貫した処理性能を低コストで提供するプラットフォーム」と説明しています。このプラットフォームは 2 基の vCPU と 8 GiB の RAM を搭載しています。また、ネットワーキング パフォーマンスはインスタンスごとに異なりますが、この点はこの比較では考慮していません。ただし、皆さんが選択するときには考慮する必要があります。
EC2 インスタンスごとに、EBS ストレージとして SSD(gp2 または io1)または HDD(st1)を追加する必要があります。ストレージ要件は控えめに VM 1 台あたり 100 GB gp2(汎用)に抑えます。
HyperFlex の構成
HX ノードに配置できる VM の数を決定するときには、CPU、メモリ、ディスク容量の 3 つのサイジング項目を検討する必要があります。また、仮想化(VMware vSphere)と HyperFlex データ プラットフォーム ソフトウェアのオーバーヘッドも考慮する必要があります。さらに、ストレージ パフォーマンスも検討する必要があります。以下で説明するクラスタは、VM 1 台あたり 100 IOPS を処理できますが、ここでは IOPS のプロビジョニング コストは AWS 側には含めません。
オーバーヘッドを評価した後、Intel® Xeon® E5-2650 v4 CPU と 32 GB DIMM X 24 を使用して、ノード 1 台あたり 171 基の vCPU と 696 GB のメモリを使用できるようにします。VM 自体のオーバーヘッドに対処するためのメモリを追加した結果、1 台のノードでメモリ リソースと CPU リソースをフル活用して 85 台の VM をサポートできるようになります。メモリや CPU のオーバー プロビジョニングは使用していません。
HX ストレージには、3.8 TB SSD を 10 台搭載した HX240c M4 オール フラッシュ ノードを使用します。復元力を確保するため、レプリケーション ファクタを 3 に設定します。これにより、8 台のノードで構成されるクラスタでの 2 ノードの同時障害に対応できます。8 台のノードは最大 85.68 TB の利用可能スペースを提供します。このブログの目的に沿って、私は圧縮や重複排除による容量面でのメリットはないと想定しています。ただし、お客様は実際には、これらの機能を使用することで利用可能容量を平均 48 % 向上できます。
HyperFlex では、他のハイパーコンバージド プラットフォームとは異なり、コンピューティングと容量を個別に、かつ柔軟に拡張できます。この機能により、リソース ニーズに合わせてサーバ タイプをより適切に選択できます。8 台の HC240c M4 オール フラッシュ ノードは、メモリと CPU を使い果たすまでに 680 台の VM をサポートできます。この例では、メモリと CPU がボトルネックになっていたため、M4 ブレード サーバを 2 台追加しました。これにより、コンピューティング リソースとストレージ リソースのバランスが取れます。この 10 ノード混合 HyperFlex クラスタでは、2 基の vCPU、8 GiB の RAM、100 GB のストレージを搭載した VM を 850 台サポートできます。
結果
では、2 基の vCPU、8 GB の RAM、100 GB のストレージを搭載した VM 1 台あたりの月間コストはいくらになるでしょうか。HyperFlex の場合は 40 ドル、Amazon の場合は前払いで 83 ドル、オンデマンドで 133 ドルです。Amazon は、オンデマンド、一部または全額前払いの 1 年および 3 年契約など数種類の価格モデルを用意しています。1この中で最も高価なのはオンデマンドです。ただし、オンデマンドは最も高い柔軟性を提供します。最も安価なのは、全額前払いの 3 年契約です。インターネットへのデータ転送料金を忘れないようにしましょう。公正な比較のため、この料金は除外しました。このため、この比較では、一部のアプリケーション シナリオに関して、おそらくパブリック クラウドのコストが大幅に低く見積もられています。たとえば、VM 1 台あたり月に 1 TB 程度のデータを転送するとしましょう。その場合、総コストが 2,817,342 ドル増加します。
どの要素を選べばよいか明確でない場合には、パブリック クラウド側のコストが低くなるように要素を組み入れました。たとえば、VMware vSphere 6 のエディションとして、より安価な Standard ではなく Enterprise Plus を選びました。これはサポート コストにも影響します。オンプレミス側には、物理サーバの導入および継続的な管理のための IT 労働コストを適用しました。私はファブリック インターコネクトのコストを含めましたが、皆さんがすでに UCS を導入している場合は、既存のファブリック インターコネクトに HyperFlex を追加できます。最後に、皆さんがすでにデータセンターを運用している場合は、HyperFlex クラスタを新たに追加しても、電力と冷却の増大以外の大きなオーバーヘッドは発生しないと考えられます。
では、これらの前提条件に基づいてコストを算出してみましょう。結果はどうなるでしょうか。
2 基の vCPU、8 GB の RAM、100 GB のストレージを搭載した VM 850 台を 3 年間運用した場合、HyperFlex は AWS と比べて 51 ~ 70 % 割安になります。
コストの前提条件の内訳を下に記載しておきますので、私がコスト要素を都合よく選んでいないことをご確認ください。t2.small、t2.medium、t2.large、m3.medium、m3.large、m3.xlarge、m3.2xlarge、m4.xlarge、m4.2xlarge、m4.4xlarge、m4.10xlarge、m4.16xlarge を全額前払いの 3 年契約で使用した場合、コストの節約率と HX クラスタあたりの VM の数は異なりますが、いずれもこの例の HyperFlex クラスタより割高になります。
最後に
私の S3260 に関するブログに対するコメントで正確に指摘されたように、パブリック クラウドはオンプレミスでは真似できないレベルの即時性とマルチサイト復元力を提供します(コストを負担する場合)。その一方で、特定のデータ タイプをクラウドに配置できないお客様や、クラウドでは満たすことができないアプリケーション遅延要件を抱えているお客様もいます。これらの要因がコストにどのように反映されるかは、使用するアプリケーションとビジネス モデルによりお客様ごとに異なります。復元力に関して言うと、ここで使用したオンプレミス コスト モデルは、完全なサイト障害(震災など)以外なら何でも対応できます。このクラスタは、2 台のストレージ ノードの障害とファブリック インターコネクトの喪失に耐えられます。パブリック クラウドを使用すれば、マルチサイトによる安心感が簡単に手に入ります。これは皆さんにとって高いコストに見合う価値かもしれません。しかし、IT 資産をオンプレミスに保持することによってかなりの金額を節約できることは確かです。また、成長ニーズがおおよそわかっている場合は、HyperFlex のような「cloud in a can(ファイアウォールで保護されたプライベートの仮想環境)」ソリューションを使用することで、パブリック クラウドとほとんど変わらない拡張のしやすさと展開速度を手に入れることができます。
皆さんが大規模な VM 環境ではなく、小規模な VM 環境を使用している場合はどうでしょうか。この場合でも HyperFlex はお勧めのオプションと言えます。255 台程度の VM をサポートする 3 ノード クラスタを導入すれば、同等の AWS ソリューションを全額前払いで導入する場合と比べてコストを 37 % 節約できます。
シスコ アカウント チームまたはパートナーに連絡し、HyperFlex ソリューションが皆さんの環境に適合するかどうか確認することをお勧めします。
関連リソース
皆さんが検討を進めるにあたり、このブログだけでは不十分というわけではありませんが、いくつか参考になるリソースを紹介したいと思います。
Chalon Duncan は、パブリック クラウド、プライベート クラウド、またはその両方の戦略に関する素晴らしいブログを執筆しています。
Kaustubh Das のブログでは、ESG によって文書化されている HyperFlex オール フラッシュ ソリューションのパフォーマンス面のメリットについて取り上げています。ぜひお読みください。
最後に、HyperFlex オール フラッシュの発表に関する素晴らしい TechWiseTV エピソードもあります。
1スポット インスタンスや専用ホストも用意されています。ただし、どちらもこの分析には適していません。スポットの価格は 5 分おきに変わる可能性があるため、容易にモデル化できません。専用ホストはオンデマンドよりもさらに高価で、柔軟性の低下を招きます。