この記事は、製品/システム担当マーケティング マネージャーである Taru Khurana によるブログ「VR & AR: The Real Deal!」(2016/8/8)の抄訳です。
パンドラ! 映画「アバター」では、パンドラは架空の美しい場所で、自然愛好家のための楽園です。この映画の 3D 版は、私の心に深い印象を残しました。パンドラでの休暇を経験したいという私の夢を共有しているかもしれない他の映画ファンも同様の印象を持ったことでしょう。 この夢は、もしかすると、バーチャル リアリティ(VR)と拡張現実(AR)によってもうすぐ可能になるかもしれません。
VR とは?
AR とは?
これらはいったいどこから始まったのでしょう?大画面ムービー、3D グラフィックス、高精細テレビ – 私たちは常に、魅力的で視覚的な経験に興味をそそられてきました。これらのメディア ディスプレイ技術のすべてには、共通したことがあります - その中にある、その場所に自分があたかも存在しているように感じさせる映像で、私たちの視界感覚全体を埋めてくれるというものです。サラウンド サウンドは、仮想空間内の鑑賞者がより深く没頭できる 360°のオーディオ体験を提供するために設計されました。
私たちはここからどこに向かうのでしょうか? 私たちの住む情報化時代では、コンテンツが職場でも、家庭でもあふれており、データが処理、送信、または投稿されることで、それらにアクセスしやり取りすることが可能となっています。VR と AR を牽引しているのは、このコンテンツ消費の広がりと隆盛です。映画「トータルリコール」に描かれたような、経験と仮想現実をシミュレーションしたら、それが本当の思い出になることに少し似ています。VRは、私たちの感覚を全て巻き込むもので、この技術が最初に重要な影響をもたらしたのはおそらくゲームでしょう。
しかし単なるゲームとエンターテインメントにとどまらず、もしかすると、仮想現実で、すべての業界が変革を起こせる可能性があります ― 教育や、皆様の職場でも- 超高速なネット接続のある快適な自宅にいながら、同僚や仲間の学生とやり取りしたり話したり出来るのです。
用途は無限大ですし、多くはまだ思いつかれてもいないのです。
実際には、今日の VR は、70 年代と 80 年代に開発された初期の概念に非常に類似しています。それでは、なぜ、2016 年の今になって、通信業界とメディアは VR の実装をそんなに話題にしているのでしょうか? それは、たくさんの革新的なイネーブラが、私たちが今日経験している VR の新しい見方と将来の見込みに貢献しているからです。
- VR コンテンツ:人々が視聴できるようなコンテンツがあまりありませんでしたが、デジタル写真とメディア技術の進歩で、VRコンテンツ制作を専門とするプレーヤーが多く存在するようになりました。例えば、実際の状況にデジタル コンテンツを重ね合わせる技術を持つ Magic Leap社(米国のベンチャー企業)や、そこに存在する三次元空間のすべてをデジタル化することに焦点を当てた Matterport 社(没入型メディア技術会社)はその一例です。 VR コンテンツは、まだ初期の段階であり、コンテンツ制作が他と比べて早くなる産業もあるでしょう。ゲームは、VR コンテンツ開発においては最初の「スイート スポット」であるように思われます。
- ネットワークおよびエッジ コンピューティングの進化 – VRは、VR コンテンツとユーザーとのインタラクションに応答するため、比較的速い速度で大量のデータ転送と処理が必要になります。エッジとクラウド コンピューティングのソリューションは、ここ数年で大幅に進化しました(また、パブリックおよびプライベート IP ネットワークも同様、この 10 年で劇的に進化しています)。
- コンシューマ デバイスの進化:VR ヘッドセットは富裕層や科学者だけのものであり、一般消費者のゴールデン タイムに向けての準備ができていませんでした。 Facebookによる Oculus の買収、そして Googleの Project Tango やダンボールのヘッドセットがこれらすべてを一変させました。シスコ VNI (Visual Networking Index)では、2020 年までに、6 億 100 万のデバイスと接続(VR ヘッドセットを含む)がウェアラブルになると予測しており、これは2015年から2020年からの予測期間を通じて 44 %のCAGRです。このセグメントにおいてかなりの成長が見込まれることが伺えます。
新しいプラットフォームのエコシステムの進化:
いかなる新しいプラットフォームにおいても、成功するためには、技術的モデルだけではなく、エコシステムとビジネス モデルも適切である必要があります。異なるエコシステムのプレーヤーがそこに飛び込んで、多額の投資をするのに十分な経済的関心が必要です。
転換点:
VR や AR の話題で、ポケモン GO に言及しないわけにはいきません。任天堂の評価額がわずか11日間で$ 11億ドル急上昇したことは、多くの VR やAR エコシステム プレーヤーにとって、潜在的利益の一部をつかもうという有形の経済的インセンティブとなっています。
ネットワーク効果を自動的に創造するエコシステムの片側と、もう片側のエコシステムを開発するためには初期投資が必要です。これは「卵が先か、鶏が先か」の状況、あるいは「ペンギンのジレンマ」(最初に水に飛び込むペンギンは多くの魚を得られるが、敵に襲われる危険も高い。後に続くペンギンは、安全である確率は高いが、得られる魚は少ない)です – しかし誰かが最初に飛躍する必要があるのです。
一般消費者の関与を中心にビジネス展開している Facebook や Google のようなハイテクの巨人は、消費者コミュニティに VR を持ち込むために、その最初の飛躍をすることにしました – VR のエコシステムは、まさに今、形を築き始めています。Facebook、Google、そしてサムスンとソニーが、無料あるいは非常に安価な VR ヘッドセットを開発しており、消費者の間で莫大な VR の普及を促進しようとしています。 これによって、より多くの企業が VR コンテンツを開発し、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)が VR アプリケーションを開発することの奨励へとつながるでしょう。
サービス プロバイダーへの影響:
こういった魅力的な革新のすべては、その品質と性能の面で、ネットワーク上に新たな需要を生み出します。帯域幅と遅延の要件は、高品質の VR や AR経験のためにますます不可欠になり、サービス プロバイダーは、この新たな需要に対応する必要があります。Cisco VNI チームが追跡しているトラフィック カテゴリの中で、最も成長率の高いものは バーチャル リアリティのトラフィックで、2014 年の月間 4.2 ペタバイトから、2015 年には月間 17.9ペタバイトと 4 倍に増加しました。世界のバーチャル リアリティ トラフィックは、2015 年から 2020 年の間に 61 倍、CAGR 127 %で増加します。
これはサービス プロバイダーにとって、そこに飛び込み、配信やGTM(Go To Market、市場展開)の機動力を提供して、VRの普及をさらに後押しできる非常に大きなチャンスです。 VR のエコシステムは、今まさに形成されつつあるところです。 クラウドのウェーブの時とは異なって、サービス プロバイダーはこれらの初期の開発のいくつかをキャッチすることが可能です。 ネットワーク接続の提供を劇的に推進する VR エコシステムの一部を所有するか、あるいは開発支援することで、大きな利益を得ることができるでしょう。
私たちが今見ていることは、エコシステム形成の始まりです。プラットフォーム戦争が迫っています。乞うご期待!大巨人たちがプラットフォーム戦争を戦う一方で –最終的に得をするのは消費者になるでしょう。
VR や ARの進化が、映画「マトリックス」や「アバター」の世界を現実化することにつながるかどうかはまだわかりません。確実に言えることは、VR や AR の普及は成長全盛であり、プラットフォームに対して早期から投資を行ったものがその未来を形成し、短期的な経済的利益を享受する可能性が最も高いということです。