6月5日(金)と6日(土)に、障害者を支援するアプリ/WEB サービスの開発を目的としたハッカソン「Support people with disabilities: Tokyo Criacao Hackathon + Conference 2015」をシスコの東京オフィスにて開催しました。シスコ は、株式会社 Criacao が主催するこのイベントに、Advance Partner として参加しました。
このハッカソンは、障害者の視点を知り、技術とアイデアで新しいバリアフリーを作ることを目的としたハッカソンで、学生が開発メンバーとして参加し、現役の開発者をはじめとする社会人がメンターを務めます。イベント中は、複数のメディアによる取材も入り、述べ 153名の参加者がありました。チームに分かれた学生達は、アイデアを出し合い、持てる技術を駆使して、新しいバリアフリー作りに挑戦しました。
カンファレンス
先ず参加者に、障害を知ってもらうために、障害を持ちながら生活している方々に、講演をしていただきました。今回登壇いただいた講演者は、以下の方です。
落合 啓士氏
ブラインドサッカー日本代表キャプテン
花井 譲氏
株式会社ナリコマホールディングスマーケティング室長
障害者を支援するアプリ/WEBサービスのアイデアにつながるエピソードを数多く提供していただきました。主なものとしては以下の内容になります。
視覚障害者の立場として
- 障害者も、慣れない場所で助けを求めることは勇気が必要なこと。今は慣れてきた。
- 自分の位置がわからなくなることがあり、駅の改札に迷うだけでなく、スタジアムの入り口に迷うことがある。
車椅子生活者の立場として
- ヨーロッパは、街が古く、石畳ばかりで車椅子には非常に不便だった。
だから、街のインフラに対するソリューションがあればいい
- 検索サイトでは、レストランの写真一覧で、特に車椅子で入店できるか、トイレの確認のために、店外と店内の写真一覧を見て、行く店を選ぶ
こうした障害者の生の声は、学生のアプリ/WEBサービスに様々な形で反映されることになります。
また、落合さんは、自身の障害への葛藤を乗り越えた体験とともに、ブラインドサッカーとの出会いが「自分が周りに与えることのできる価値を知る」きっかけになり、そのために努力をしていることなどを講演され、花井さんは、就職先でも初となる車椅子の社員の採用に対して、会社とともに様々なチャレンジがあったこと、花井さん自身の事例を紹介することで、その人の障害の違いはあれど、長年に渡る経験を、笑いも交えながら講演いただきました。
ハッカソン
初日の夕方まではアイデアソンの時間とし、学生達は障害者の視点を考え、どのようなものが開発できるのかをチームごとに協議しました。
2日目は、朝から開発作業を続け、午後からは発表会の準備に取り掛かりました。
当初は、障害者を支援するアプリ/WEB サービスを前提に、学生達は議論・開発をしていましたが、初日の講演内容から感じたこと、また、個々のチームの議論、開発、発表会の準備が進むにつれ、自分たちのアイデアやアプリ/WEB サービスが、障害者に限らず、高齢者や一般の人にも価値があることにも気づき始めたようです。とても汎用性のあるアプリや Web サービスの開発に拡がっていきました。
停滞しているように見受けられるグループには、メンターや実行委員、ゲストスピーカーが積極的に声をかけ、サポートに回っていました。
Cisco WebEx も活用し、画面共有をし合うグループもあり、将来のハッカソンの姿を垣間見ることもできました。
発表会
5名の審査員を含む参加者が見つめる中でのプレゼンテーションは、緊張のあまりスライドの順番が飛んでしまったり、デモがうまくいかなかったりといったアクシデントも見られましたが、チームは限られた時間の中で、2日間の成果を発表しました。
審査員は、以下の5名です。
矢谷 浩司氏(審査委員長)
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻准教授 兼 インタラクティブ・インテリジェント・システム ラボ (IIS Lab)
長部 謙司
シスコシステムズ合同会社
鎌田 真行氏
株式会社オムニバス データ&テクノロジー Div. プロダクトマネージャー
花井 譲氏
ナリコマHD マーケティング室長
米田 智彦氏
株式会社メディアジーン / ライフハッカー[日本版]編集長
結果発表
最優秀賞:Push Helper
緊急時にヘルプの発信ができる。 GPS と連動させておき、アプリをダウンロードしているヘルプに対応できる人は、そのヘルプを受けとることができる。
優秀賞・アイディア賞:MIZAP(マイザップ)
うつ病疾患者や精神的に病んでしまっている方が、カウンセラーと相談できる。 オンラインで顔を見ながら話すことができ、テキストにコメントが残せるため振り返りができる。
優秀賞:こえみ〜る
聴覚障害者が、自分で発声練習ができる。 音声認識で、その音がしっかり発音されているか、また音量などが視覚で分かる仕組みとなっている。
参加者の変化
参加者の中には、技術専攻学生の1年生も何人かおり、当初は「自分にはまだ何もできない」とハードルの高さを感じたようでした。しかし、技術と同様にアイデアの重要性、役割分担の重要性をチーム全体で感じ取り、作品のアイコンとなるイラストを書いたり、作品発表で大きな役割を果たしたり、誰にでもできることと役割があると認識したようです。
最後に、このイベントを取り上げた記事を紹介します。
- アプリで障害者サポート―ハッカソンで開発競う(朝日新聞デジタル)
- 障がい者をサポートするスマホアプリ・ウェブサービスの開発!(Lifehacker)
シスコは、弊社のネットワーク技術を用いながら、こうした社会貢献事業のお手伝いをすることで、ネットワークが、障害をもった方々にも身近なものであると思っていただけるような活動を続けていきます。