オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアはいくつかありますが、150以上の会社・団体が参加する最大規模のコミュニティに成長し、ますます注目が高まっているのが OpenStack です。多くの IT ベンダーが OpenStack に注目するなか、シスコはどのような取り組みを行っているのでしょうか? まずは主要な活動についてご紹介します。
Neutron ネットワーク分野への貢献
シスコが開発コミュニティに参加したのは2011年のことで、それから現在に至るまでネットワーク分野での貢献を続けています。参加当時、OpenStack のネットワーク機能は、コンピューティング機能を担う「Nova のオプション」(nova-network) として実装されており、柔軟なネットワーク設定ができない状態でした。シスコは、このネットワーク機能を分離し、Neutron (旧名 Quantum) プロジェクトとして立ち上げ、そしてその機能拡張をリードしています。同時に、シスコのデータセンター向けネットワーク機器である Cisco Nexus スイッチ上で OpenStack が動作するための「Neutron plugin for Nexus ソフトウェア」の開発および提供も行っています。この plugin ソフトウェアでは、現在、物理ネットワーク スイッチである Cisco Nexus 3000/5000/6000/7000 シリーズをサポート
しています。加えて、 Cisco Nexus 1000v の KVM 対応版の開発を発表
しており、これによって OpenStack がサポートしている KVM 仮想基盤上の仮想マシンのスイッチとして、仮想ネットワーク スイッチ Cisco Nexus 1000v を使用できることになります。
Nova コンピューティング分野への貢献
コンピューティング分野については、当初、OpenStack がプロビジョニング対象としていたのは仮想環境のみでしたが、徐々に物理環境にも範囲を広げてきています。シスコでも x86 サーバ Cisco Unified Computing System (UCS) を提供していますので、この分野での取り組みを始めており、今年の5月に Puppet/Cobbler 設定ツールを使用して UCS 上で Nova ノードのセットアップを行う手順についての文書と、その中で使用する Python スクリプト群
を公開しました。Cisco UCS は物理環境のプロビジョニングについて強力な管理インターフェイスを備えており、OpenStack からどう連携するかについての実装例として参考にしていただくことができます。
OpenStack Cisco Edition の提供
シスコは 2012 年末から OpenStack Cisco Edition
を提供しています。これは Essex、Folsom もしくは最新の Grizzly リリースの OpenStack をベースに、インストール スクリプト、高可用性、監視系のオープンソースのツールをパッケージ化したもので、OpenStack 上でシスコのネットワーク機器の動作を試したい場合に使用できます。また、このパッケージ作成の際に見つかった問題・修正点は OpenStack 開発コミュニティにフィードバックされています。
エンドユーザとして WebEx SaaS での活用
シスコは WebEx サービスの基盤ソフトウェアに OpenStack を採用
しています。WebEx 部署は従来からオープン ソースを扱ってきており、2011年に規模が拡大し、世界中に分散していた複数のデータセンターに対応できるクラウド基盤ソフトウェアの評価・比較を行った結果、 OpenStack を選択し、本番環境で運用しています。
まとめ
シスコの OpenStack に関する主要な活動について紹介してきましたが、その特徴についてまとめてみたいと思います。
他の IT ベンダーは OpenStack への注目度の高まりと共に、OpenStack を採用した IaaS クラウド サービスを提供し始めました。シスコでも SaaS の基盤ソフトウェアとして OpenStack を採用しましたが、既存のビジネスの延長であり、新規のサービスプロバイダー ビジネスへの参入といった側面はありません。シスコはシステム ベンダーとして、変わらずインフラの提供に注力しているのは1つの大きな特徴と言えます。
このインフラ提供についてネットワーク分野、そしてコンピューティング分野での取り組みに共通するのは以下の2点になります。
- シスコのインフラ上で OpenStack が問題なく動作する点
- OpenStack からシスコのインフラ機能が活用できるようにする点
これらはシスコのインフラを選択してくださったお客様、そして検討されているお客様への投資保護というメリットに繋がる重要事項と認識しています。
今回はシスコの OpenStack への取り組みについてご紹介しましたが、OpenStack は半年に一度のリリースを通じて進化していますし、個々の活動での進展もありますので、関連する話題について随時取り上げていきたいと思います。
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