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ビッグデータが変えるコンタクトセンターの未来


2013年11月19日


前回のエントリーで、コンタクトセンターはこれまで 2つのイノベーションの波を経験し、現在第三の波に挑みつつあることを書きました。この 3つの取り組みは、顧客の「必要」を満たすための取り組み、「満足」を得るための取り組み、そして「感動」を与えるための取り組みと言い換えることもできます。「感動」を与えるとは、顧客の期待を上回るサービスを提供することです。すなわち、求められてから応ずるのではなく、顧客より先に気づいて対応する、能動的なサービスです。

こうした「感動」を与えられるコンタクトセンターが本格的に求められるようになったとき、テクノロジーはどのようにしてそれを支援できるのか。これがシスコが描くビジョンです。前回の記事で予告したように、このエントリーではシスコのビジョンをご紹介したいと思います。

未来的な話をする前に、少し過去を振り返ってみましょう。製造業における生産品質管理です。

製造業では生産品質管理は企業の命運を左右しかねない重要事項です。もしこれをやらないと、何かの拍子にロット不良を起こしてしまった場合、大量の苦情と返品で窮地に陥ります。たとえ品質を監視していてもレポートがリアルタイムでなくては同じことです。ロット不良が発生しているのに月末締めでレポートが上がってきたのでは、レポートされた頃にはすでに大騒ぎです。そこで製造業では出荷前の抜き取り検査や故障修理交換の傾向などを常に監視していて、異常な傾向が見つかるとすぐに対策を講じられるように準備しています。実際には製造過程から流通・サービス過程まで幅広く奥深く探針を差し込みデータを取ることで、より早くより正確に異常を検知し、短時間で対策を決定し行動に移れるよう、システムを構築しています。

ここで起きていることは、リアルタイムにデータを集め、分析し、能動的にアクションを起こすということです。

コンタクトセンターは今後能動的なサービスへと変化していく、と申し上げましたが、そのためにはアクションのきっかけとなる情報が必要です。その情報源は断片的な小さな情報を幅広く収集し分析することによって得たものになるでしょう。製造業に倣えば、基幹システムから得られる情報を利用することがすぐに思いつきます。近年になって、ソーシャル ネットワークから有効な情報を得ようとする取り組みも行われるようになりました。

カーナビとクラウドの特徴的な結びつきの例をご存知の方は多いと思います。個々のカーナビが走行情報をクラウドに上げ、それを分析することによって極めて精度の高い渋滞情報を抽出し、今度はこれをカーナビにフィードバックして経路案内に活かす、というものです。カーナビの例が生産品質管理やソーシャルメディアの分析と際立って違っているのは、カーナビが巨大な「モノのネットワーク」すなわち「Internet of Things」を作り上げていることです。

こうした「モノ」のネットワークは、やがて“あらゆるもの”へと拡大していき、いずれ「Internet of Everything」となるとシスコは予測しています。そして究極的には、コンタクトセンターもまた「Internet of Everything」から得られる巨大なデータを分析し、その結果に基づき顧客に先回りしてアクションを起こしていくようになる、そういうふうにシスコは考えています。Internet of Everything が生むビッグデータとその分析技術がコンタクトセンターのあり方を変えてゆくのです。

いずれ本当にそうなるかも知れないとしても、やや雲をも掴むような話でもあります。そうした未来を見据えたとして、それでは今、何をするのでしょうか。

シスコのコンタクトセンター製品は、API を充実させることでそうした未来に対して準備を進めています。コンタクトセンターが、つまりエージェントがアクションを起こすきっかけが、電話の着信ではなくビッグデータを分析する何らかのアプリケーションに変化するのであれば、そこからのリクエストを受ける API が必要になります。こうした API は、Internet of Everything など少し先のものばかりでなく、Web サイトやスマートフォンなど新しい種類のチャネルに柔軟かつ迅速に対応していくのにも役に立ちます。

例えば、現在出荷中の最新版 Release 9.0 では、突発的な着信のラッシュに対する ACD の反応をパラメータ化でき、パラメータを API で自動制御できます。例えば何秒間待たせたらバックアップ グループへもキューイングするか、主担当者を指定するスキルやスキル レベルの基準はどうでバックアップ担当者の基準はどうか、誰にどのスキルとレベルを割り当てるか、等々。これらは従来は人手によっていたため、変更の判断材料はコンタクトセンターのリアルタイム レポートぐらいしか使用できませんでした。それらを API 化することで、初めて外部環境の変化を取り入れることが可能になるのです。

間もなく登場予定の Release 10.0 ではさらにもう 1つ興味深い API が加わる予定です。製品がリリースされたら改めて触れたいと思います。

コンタクトセンターが挑む第三の波は、もはやコンタクトセンターの中だけではどれほど努力しても乗り越えられない大きな挑戦になります。なぜなら第三の波は企業自身にとっての挑戦だからです。ならば API によってコンタクトセンターと企業の IT を密に連携し、IT と一体となって顧客へのサービスを提供していく。コンタクトセンターを競争力の源泉にしていくというのはそういうことなのではないかと思います。

さて、今回はビジョンについてお話しましたが、ビジョンだけではお客様はお金を払って製品を買ってくださいません。シスコがお客様が求めるものを実現し、今実現できていないこともいずれ近い将来実現されるとお客様が信じるに足るだけの、実行力が必要です。次回は、シスコのコンタクトセンター製品開発を支えているアジャイル開発プロセスについてお話ししたいと思います。

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