シスコのオブザーバビリティ・ソリューション AppDynamics は,ABAP(Advanced Business Application Programming) で書かれた SAP アプリケーションのコードレベル性能監視を提供し,また,SAP システムの主要な性能指標を俯瞰的に監視可能とする数十のダッシュボードを OOTB(Out of the Box) で提供します。本投稿では,AppDynamics ABAP Agent が提供する主要な機能について解説したいと思います。
AppDynamics SAP 性能監視ソリューションは以下のコンポーネントで成り立っています。
AppDynamics SAP 性能監視の主な機能としては以下のものがあります。
SAP アプリケーションと,Java/.NET(C#)/Node.js/Python/PHP 等で記述された,非 SAP アプリケーションに AppDynamics APM Agent を導入することにより,アプリケーションシステム内の各アプリケーションサービスの依存関係と各サービス間の性能指標(コール数/応答時間/エラー数)などを自動的に描画することが可能です。
マップ上で性能低下/エラーの発生しているサービスは赤/黄色で表示され,直感的に性能問題を把握することが可能です。
アプリケーション上で発生しているトランザクションの性能を常時機械学習し,平常時の性能指標レベルを把握(動的ベースライン),性能低下/エラーが発生した際に Slow/Very Slow/Error 判定を自動的に行います。
また,動的ベースラインに基づき,平常時との性能値の乖離が大きくなった際にアラート通知を行うことが可能ですので,アラート条件しきい値のチューニング等を省力化することが可能です。
各トランザクションでは トランザクション・スナップショットと呼ばれるトランザクション性能の詳細情報が取得されており,特に性能の低いトランザクションに関しては,スタックトレースがすべて取得されます。このスタックトレース取得において AppDynaics では SAP ABAP コードにも対応しています。
また,ABAP 以外の Java/.NET/Node.js/Python/PHP アプリケーションも同様に各コールの実行時間とともにスタックトレースが取得可能です。
加えて,Data Collector と呼ばれる機能で,性能の低い SQL 文,データベース性能値なども同時に取得することが可能です。
AppDynamics では以下のダッシュボードが標準で提供され,これらのダッシュボードを AppDynamics エンドユーザがスクラッチから作成する必要はありません。
以下の図は,HANA メモリ・ダッシュボードの例です。このようなダッシュボードが標準的に各 SAP アプリケーションサーバ毎に生成されます。
AppDynamics では,トランザクションコール時の引数,戻り値などから任意の数値/文字列を抽出することが可能で,これによりリアルタイムにビジネス KPI を抽出,集計してダッシュボードに表示することが可能です。またこれらの指標はアラート通知条件にも用いることが可能です。
また,このような分析処理に 3rd Party の BI(Business Intelligence) ツール, ETL(Extract/Transform/Load) ツールは不要です。
今回は Cisco AppDynamics の SAP アプリケーション性能監視の概要に関してご説明させて頂きました。以下のような特長を持つことをおわかり頂けたかと存じます。
また,過去に実施させて頂いた SAP 性能監視に関する Webinar を下記のリンクから視聴いただけます。
AppDynamics Webinar シリーズ – SAP S/4HANA 監視