Routed Optical Networking が拓く”Internet for the Future”

先日、IDC より「ルーテッドオプティカルネットワーキング ― コンバージドネットワークへの道」と題したレポートがリリースされました。このレポートの中心となっている「Routed Optical Networking (ルーテッドオプティカルネットワーキング)」は、IP ネットワークとオプティカルネットワークの統合を実現する、シスコの提唱する新しいアーキテクチャです。

本ブログでは上記の IDC のレポートを要約し、Routed Optical Networking に焦点をあてつつ、今日のインターネットインフラの課題やその対応策、シスコが提供できるベネフィットについてご説明します。

背景

2020年に発表したシスコの調査報告書 Cisco Annual Internet Report では、今後のトラフィック需要を以下の通り予測していました。

 

  • 2018年に39億人(世界人口の51%)であったインターネットユーザの総数は、2023年までに53億人(世界人口の66%)に達する。
  • 世界の平均ブロードバンド速度は引き続き高速化し、2018年の45.9Mbpsから、2023年には2倍以上の110.4Mbpsになる見込み。ブロードバンドの高速化により、帯域幅の大きなコンテンツやアプリケーションの消費と利用が増加する。
  • 2018年の全世界におけるモバイルネットワークの平均接続速度は13.2 Mbpsでした。2023年には3倍以上の43.9Mbpsになると予測される。

この調査は COVID-19 の影響が起こる前の時点のものであり、現在はより急速にインターネットの利用が加速しています。パンデミックの後、デジタル化の速度は約7倍に加速しました

サービスプロバイダー企業は 5G を初めとするネットワークアーキテクチャの改革を始めています。しかしながら現在の主流なネットワークは階層化したサイロなアーキテクチャになっている場合があり、ネットワークリソースの利用率低下や収益性への影響が懸念されます。

トラフィックの増加と経済合理性のバランスを取ることの難しさ

今日、多くのサービスプロバイダー企業は、1 ドルの CapEx に対してほぼ 5 ドルの運用コストを費やしていると言われています。現在のネットワーク管理技術では、ネットワークが大きくなればなるほど、複雑性が増し運用の難易度が上がるため、より状況が複雑化する事が懸念されています。

アーキテクチャの複雑性から発生するコストの増加。現在のアーキテクチャ、複雑性とその課題

多層アーキテクチャを使用して個別のネットワークを構築し運用する方法は、今日に於いては必要以上の冗長性を生む可能性があり、複雑性や運用コストの増大の不安があります。ネットワークをシンプル化し、クラウドを使用して進んだ体験(エクスペリエンス)を提供し、デジタルデバイドを解消する事が期待されています。シスコは、インターネットの基盤の中でネットワークを再発明することから始めなければならないと考えていました。

光伝送技術と IP ネットワークを統合:Routed Optical Networking のベネフィット

今日のインターネットインフラが今後も経済合理性を保ったまま成長・変革を続けるために、従来の延長ではない新しいアーキテクチャへ移行する必然性が高まっています。

シスコは多層かつサイロ化したネットワークレイヤーを統合(コンバージ)にし、CapEx および OpEx を最適化しながら複雑性を回避したシンプルなインフラを実現する「Routed Optical Networking (ルーテッドオプティカルネットワーキング)」というアーキテクチャを発表しました。

Routed Optical Networkingを適用したインターネットインフラは、ルーターのキャパシティの増加、及びオプティカルレイヤーのシンプル化による Gbps 当たりのコスト低減によって最大で46%の TCO 削減、57%の OpEx 削減、35%の CapEx 削減が可能です。

Routed Optical Networkingの構成要素

それでは Routed Optical Networking をどのように実現するのか、このアーキテクチャを構成する主要な要素を詳しく確認していきたいと思います。

シリコン(ASIC): Cisco Silicon One

2019 年 12 月、シスコは Cisco Silicon One Q100 を発表しました。Cisco Silicon One Q100 は、他のシリコンに比べて 2 倍以上のキャパシティと 2 倍の電力効率を提供します。これは、キャリアクラスの機能(機能の豊富さ、大きなバッファ、高度なプログラマビリティなど)を損なうことなく 10Tbps /ASICの壁を突破した世界初のルーティングシリコンです。

しかしそのわずか 10か月後の 2020年 10月に、シスコは次世代の Cisco Silicon One Q200 ファミリーを発表しました。6つの新しい 7nm プロセスの ASIC により、サービスプロバイダー用ルータや Web スケールルータからトップオブラック(TOR)まで、様々なユースケースをカバーできるようになりました。Cisco Silicon One Q100でも非常に高いキャパシティを実現していますが、Q200ではさらに性能を向上させ、最大 12.8 Tbps /ASICのキャパシティを実現しました。

2021年3月には2種類のQ200の8 Tbpsをリリースしてラインナップを拡充し、Cisco Silicon One G100として 25.6 Tbps/ASIC のバリエーションも追加で発表しました。

オプティクス: デジタルコヒーレント(DCO)オプティカルプラッガブルモジュール

シスコは何年にもわたって、シリコンフォトニクス テクノロジーを進歩させてコストを削減してきました。シスコは、シリコンフォトニクス製造プロセスを使用して歩留まり、サイズ、および搭載密度を改善することにより、今までのオプティカル製品の状況を変革したいと考えています。

Acaciaを買収したことで、業界をリードするコヒーレント テクノロジーによってシスコのオプティカルポートフォリオが拡張されます。Acaciaは、400G ZR および OpenZR+を含む 100G、200G、および 400G コヒーレントプラガブルオプティクスに強みを持っています。このテクノロジーを取り込むことによってインターネットインフラのアーキテクチャの再定義を推進します。

システム

新しい Cisco 8000 シリーズルータ には、最新のCisco Silicon One Q200が採用されています。Cisco Silicon One Q100 も非常に低消費電力な ASIC ですが、Q200 を使用した固定シャーシモデルでは、Q100 と比較して消費電力がほぼ半分に削減されます。モジュラーシステムでは電力が3分の1に減少します。Cisco Silicon Oneの消費電力対パフォーマンスの向上は劇的なものと言えます。

新しいモデルでは競合他社の最新モデルよりも最大 7 倍の電力効率を備えています。2.25W/100G という消費電力は、LED 懐中電灯を照らすよりも少ない電力で 100G を供給できるという事を意味しています。

ソフトウェアIOS XR

ネットワークオペレーションの経済合理性を保つためにはソフトウェア(OS)も重要になります。

業界をリードする Network Operating System の新バージョンである Cisco IOS XR7 は、シンプルさと自動化により、オペレーションを効率化するように再設計されました。消費するリソース・インストール手順・および展開作業 (ゼロタッチプロビジョニングなど)を削減するためにシンプル化されています。

最も注目すべきは、XR7 が完全に近代化(モダナイズ)されたことです。XR7 はこれまでに類を見ないクラウド強化型 OS です。IOS XR7は、Cisco Crosswork Cloud からクラウドで提供される新しい SaaS 展開モデルを活用して、運用を効率化できます。オプションで、従来型モデルのリスクやリソースを必須とせず、アジャイルでプロアクティブな管理のための、サービス型での洞察(インサイト)と分析(アナリティクス)を利用できます。

IOS XRCisco Crosswork を使用してテレメトリ データと高度なインテントベース プログラマビリティを提供します。新しいトラフィック分析機能は、複雑なトラフィック パターンを最適化するための可視性と実用的な洞察を提供します。クラウド ネイティブ ブロードバンド ネットワーク ゲートウェイ(cnBNG)の追加により、有線、ワイヤレス等の加入者管理を統合する事も可能になります。

セグメントルーティング

セグメント ルーティングとEVPNを使用して、従来より提供してきたサーキット形式のサービスをルーティングネットワークの上で提供する事も可能です。たとえば、ノードまたはリンクの障害から50ミリ秒未満でのサービス復旧が可能と言ったような事です。

ネットワークの設計は、遅延、帯域幅、信頼性、パス回避などのさまざまなSLAをセグメントルーティングを活用することでシンプルに運用することが可能になります。

まとめ

シスコは Routed Optical Networking アーキテクチャを実現するために様々なポートフォリオを持っています。特にルータはシスコ独自の ASIC を使用した Cisco 8000 シリーズルータや Cisco ASR 9000 シリーズルータがあります。ユースケースに応じて使用可能なマーチャントのチップを使用した Cisco NCS 5500/5700 シリーズルータCisco NCS 500 シリーズルータも販売しています。

これらのルータに加え、様々なプラッガブルな Optics を使用する事で近距離〜長距離まで 1 つのルータで、展開する環境に応じた柔軟にネットワークデザインが可能です。

シスコはインターネットインフラの全体のアーキテクチャを革新するために開発を続けています。インターネットの経済性を更に先に進めるための意思があれば、次の 10 億人のユーザーにインターネットを提供することがでると考えています。デジタルデバイドの解消は、まさに Internet for the Future(未来のためのインターネット)と言えるのではないでしょうか。

 

大塚 真也

2006年新卒入社。サービスプロバイダーおよびエンタープライズ担当のアカウントマネージャー、金融機関・公共機関担当のサービスセールススペシャリストを経て、2020年1月より現職のサービスプロバイダー向けルータ製品のプロダクトセールススペシャリストに着任。日本市場において次世代のテクノロジーやアーキテクチャの創出を図ることに従事。