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フルスタックのオブザーバビリティ(可観測性):ネットワーカーのための簡単な紹介

この記事は、Cisco DevNet の Global Head of Developer Experience である Eric D. Thiel によるブログ「Full-Stack Observability: A Quick Introduction for Networkers」(2021/6/1)の抄訳です。

テクノロジーオペレーション分野、たとえばネットワーク管理、ソフトウェア エンジニアリング、セキュリティ、または IT 部門で働く人の中で、ゲームセンターに行ったときにモグラたたきで遊びたいという人は誰もいないでしょう。なぜなら毎日の仕事がまさにモグラたたきなのですから。私たちは自分の持ち場のモグラ穴に集中し、次々と飛び出す問題を叩き潰していきます。すばやく叩ければ問題は解決できます。

私たちの仕事では、このゲームと同様、集中して自分の領域を観測することが重要です。高いスキルと注意力がなければ、得点を伸ばすことはできません。しかもその範囲は、ハンマーが届くところまでです。隣のゲーム機のモグラを叩くことはできません。そもそも、目の前のゲームで勝とうと思えば、隣に意識を向ける余裕もないでしょう。

しかしゲームセンターの敷地は広大で、穴は無数にあります。厄介なことに、モグラはマシンとマシンの間に潜んでいます。今のところ、人海戦術で事にあたるしかない状態です。

そこでご紹介したいのが、フルスタックのオブザーバビリティです。

システムを常に快調に

飛行機の乗客が、その航空会社のモバイルアプリでチケットの再予約ができない場合、解決すべき問題はどこにあるのでしょうか。モバイルアプリ自体に問題があるのか、ユーザのネットワーク接続が悪いのか、はたまたクラウドサービス、演算サーバ、データベース、トランザクション処理サービスへの API コール、あるいはその他の問題なのか。問題の根本原因が分からなければ解決することはできません。パフォーマンス、セキュリティ、または効率性の問題を解決する方法を特定するには、専門領域に関する知識とともに、アプリケーションを総合的に見る視点も必要です。この視点があれば、ある問題が上位のシステムにどう影響しているかが分かります。

フルスタックのオブザーバビリティ(FSO)ソリューションは、これらのさまざまな分野を 1 つにまとめ、アプリケーションからネットワーク、クラウド、データセンターなどのパフォーマンスの分析データを集約して互いに関連付けます。

FSO は昨今ますます実用性を高めてきています。これはテクノロジースタックのあらゆるレベルにおいて、製品とサービスのオブザーバビリティが継続的に改善されてきているからです。しかし、よく言われるように、あらゆるデータを正確かつ迅速に分析して問題解決に至るまでは長い道のりです。

現在のところ、テクノロジースタック全体を継続的にモニタリングし、複数のコンポーネントにまたがる問題がどこで生じても、その問題や相互作用に対応できるようテクノロジーを最適化するには、複数の分野の専門知識が必要です。順調な動作の継続と、固有のニーズに対応できる自動ソリューションの構築には、皆さんそれぞれのテクノロジー分野の知識が不可欠です。

ビジネスの成否は、高度に相互依存したシステムをいかに円滑に運用できるかによって大きな影響を受けるため、分野を超えた学びや重なり合う分野についてさらに学びを得ることが重要です。フルスタックのオブザーバビリティは、さまざまな分野にわたる分析情報を提供します。また、ビジネスプロセスのパフォーマンス向上など、同じ目標に向けて働いている人々ともっとコミュニケーションができれば、必要なときに包括的な改善策や修復方法をより迅速に見つけ出すことができるでしょう。

シスコでは、これに役立つツールをいくつかご用意しています。

AppDynamics

AppDynamics は、基本的にはアプリケーション パフォーマンス管理(APM)ツールであり、ユーザのデバイスからクラウドサービスまで、さまざまなビジネスで使用されているアプリケーションに関して、リアルタイムかつアラートベースのインテリジェンスを提供します。AppDynamics は、いったんアプリケーション パフォーマンスのベースラインを設定すると、継続的にパフォーマンスとそのベースラインとを比較し、逸脱があればレポートします。スタック内のアプリケーションのパフォーマンスがベースラインを下回り始めると、どこに問題があるのかを、コード行や特定の API コールといったレベルで示すことができます。もし特定のネットワークコンポーネントの低速化がシステムの足かせとなっている場合、それをアラートで知らせます。その時点で、経験上自ら想定していた問題点が裏付けられる場合もあれば、新しい分析情報がシステムに加わったことで迅速な問題解決につながる場合もあるでしょう。

AppDynamics の基本の APM ダッシュボードが、アプリケーション コンポーネント間のやり取りとパフォーマンスの問題がありそうな場所を表示

AppDynamics はソフトウェアコード作成者、開発エンジニア、およびサイト信頼性エンジニア(SRE)にとって非常に役に立つツールであり、アプリケーションがネットワークにどれくらいの負荷をかけているか、またこれらのアプリケーションを円滑に動作させるためにインフラストラクチャをどのように調整すればよいかを理解する助けとなります。

AppDynamics を使用すれば、パフォーマンス分析情報をビジネス KPI に関連付けることもできるので、IT チームは、ビジネスにおける重要性の観点から、より的確に業務の優先順位を付けることができます。利用を開始するには、AppDynamics Dev Center をご覧ください。

ThousandEyes

ThousandEyes は、あなたの会社のアプリケーションが、会社のネットワークの外部のネットワークインフラを使用する際に通る経路を示してくれます。また、インフラストラクチャ、データセンター、およびクラウド間のライブ接続を表示できます。搭載されているツールは、あなたが管理している 2 つのプロセス間(たとえば、フロントエンドのアプリとバックエンドのデータベースサーバ)のネットワークの動作だけでなく、独自のエージェントネットワークにより、世界の主要な接続拠点であれば、ほとんどどの 2 拠点間でもインターネットのパフォーマンスをモニタリングできます。

ThousandEyes は、ユーザが生成したトラフィックを模倣した IP トラフィックを生成するシンセティックテストを実行できます。これにより、新しいオンラインツールや製品を導入する前に、応答時間、ページロード時間、その他の主要なパフォーマンス指標といった測定基準を把握することができます。これらのシンセティックテストを ThousandEyes グローバルエージェントに対して実行することで、さまざまな地域におけるアプリケーションのパフォーマンスを確認できます。さらにプラットフォームの API を使用すると、アップデートがソフトウェアのリポジトリまたはネットワーク構成にプッシュされるたびに自動的にこれらのテストを実行できます。

このユースケースについては、シスコデベロッパーアドボケイトである Kareem Iskander、および DevNet Snack Minute が共同ホストする、ThousandEyes API を利用してテストの作成を自動化 を参照してください。

ThousandEyes エージェントが、ISP やクラウドプロバイダからオンプレミスのデータセンターまで世界中のネットワークトラフィックとパフォーマンスをモニタリング

ThousandEyes の API やウェブフックは、ServiceNow などのサードパーティ製アプリケーションとの統合も可能で、エンドツーエンドな ITSM 統合、アラート、問題の即時解決を実現できます。

ネットワークエンジニア、開発エンジニア、そして SRE にとって、非常に役に立つツールです。

Intersight

Intersight はクラウド運用プラットフォームです。クラウドホスト型のマイクロサービスクラスタからオンプレミスの演算サーバまで、ご利用の演算システムやネットワークインフラにプロセスをデプロイし、その後の管理を実行できます。

Intersight Workload Optimizer を使用すると、1 つのインターフェイスからシステムのパフォーマンスに影響するサービスの構成にアクセスして調整することができます。Hashicorp の Terraform Cloud Business や当社独自の HyperFlex プラットフォームといったツールを備えたインフラストラクチャと統合することで、高度に集約されたインフラストラクチャを実現できます。

この製品は、プロセスをホストする物理マシンや仮想マシンにフォーカスしています。AppDynamics や ThousandEyes から得られる分析情報を適用できる統一されたプラットフォームを提供するだけでなく、クラウドまたはオンプレミスで実行されるサービス間でフィールドを均一にするので、簡単にプロセスを最善の環境に置くことができます。また、要件の変化に応じてプロセスを移行することも可能です。

Intersight は他のツールと同様、コンソール(ClickOps)から、または API を介してプログラムに従って制御できます。詳細については、Intersight Dev Center をご覧ください。

Intersight Workload Optimizer が、AppDynamics (およびその他のツール)からの入力に基づいて変更を有効化

組み合わせて活用

ご存知のとおり、ビジネスアプリケーションとプロセスは膨大な数に及び、それらすべてを実行するには、それぞれの専門知識を持ったさまざまな人材が必要です。従来、そうした人たちは皆独自のツールを使っていました。

フルスタックのオブザーバビリティ(FSO)は、「チーム間の垣根をより風通しの良いものにする」というビジョンを開発チームと共有しています。FSO で当社はさらに、「システム全体の現状についての検証データを基にコラボレーションできる」というコンセプトを加えました。これによって、何かを改善しないといけないときに、どういった専門知識が必要なのかを迅速に判断できるようになります。

ここで説明したツール、つまりユーザエクスペリエンスとビジネスを相関させる AppDynamics、ネットワークそのものが与える影響を把握する ThousandEyes、これらの分析情報をさらにインフラストラクチャにまでつなげる Intersight があれば、テクノロジーを利用したビジネスプロセス全体を観察し、制御することが可能になります。

新しいハイブリッドクラウドに関するさらに役立つガイドについては、最新の Cloud Developer Center をご覧ください。

 

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Kazumasa Ikuta

シスコシステムズ合同会社 APJアーキテクチャー プリンシパルアーキテクト。2001 年入社。エリア担当 SE、通信事業者担当 SE、SDN応用技術室を経て、2021年よりアジア太平洋地域アーキテクチャーセントラルグループ所属、プリンシパルアーキテクト。主に企業向けのネットワーク運用管理全般および製品、SDNやネットワークプログラマビリティ関連、Cisco DevNetを担当。提案、構築、運用維持管理における技術サポート、本社開発部門と連携したアジア地域での製品や技術のロールアウトプラン策定と実行、対外的なプレゼンテーションなど、仕事を選ばず幅広く活動中。書籍:Ciscoネットワーク構築教科書[解説編](共著)Ciscoネットワーク構築教科書[設定編](共著)Cisco WAN 実践ケーススタディ(共著)