クラウドアプリケーションの実行に関して明確な方針を立てる際に、APM を役立てる 7 つの方法

この記事は、Sentia グループの Ymor 社でテクノロジーリーダーを務める Jan Elmelund Olsen によるブログ「7 Ways APM Helps IT Chart a Clear Course for Running Apps in the Cloud(2020/7/15)の抄訳です。

 

クラウドにスムーズに移行したいとお考えですか?この記事では、移行の成功に向けて明確な方針を立てるために、移行の前と後に何をすべきかについて詳しくご紹介します。

新居への引っ越しは人生の中で特にストレスが多いイベントの 1 つですが、IT チームの場合、クラウドへのアプリケーションの移行も同じくらいに骨の折れる一大イベントと言えます。コロナ禍が続く現在においては、なおさらです。IT の優先事項が急転し、各チームは短期的な目標と長期的な目標(クラウドへの移行をできるだけ経済的に完了する方法など)を再評価する必要に迫られています。

コロナ禍では方針の変更や新しいプロジェクトの開始が場違いに思えるかもしれませんが、現実には多くの IT チームにとって、変化こそが「ニューノーマル」となっています。実際、AppDynamics による最近の調査によると、95% の組織がコロナ禍の過程でテクノロジーの優先順位を変更し、戦略を転換したことが明らかになっています。

では、IT チームはどこに重点を移そうとしているのでしょうか?

Gartner 社によると、IT チームが現在特に注目しているのはクラウドです。Gartner 社はこの傾向を踏まえて、パブリッククラウドサービスが今年 19% 成長すると予測しています。

現在の世界情勢を鑑みると、そうした予測は極めて理にかなっています。パンデミックにより、3 密対策のテレワークなどが大幅に増加し、さまざまなビジネスアプリケーションの需要と使用量が急増するとともに、パフォーマンスの向上が強く求められているからです。俊敏性、市場参入のスピード、拡張性を謳うクラウドは、パフォーマンスに対する要求が高まる中で必然的なソリューションだとも言えます。しかし、クラウドへの移行を進めるにあたっては注意が必要です。多くの企業は、クラウドへの移行を狭い視野で捉えがちで、重要なビジネスプロセスにおけるクラウドの広範な役割を無視しているケースが少なくありません。

その結果、クラウドへの移行戦略が、事実ではなく推測に基づいたものになってしまいます。

クラウドへの移行を成功に導く「設計、構築、運用」の 3 段階プロセス

幸いなことに、クラウドへの移行をより的確に計画する方法があります。シンプルな「設計、構築、運用」の 3 段階プロセスと、適切なアプリケーション パフォーマンス モニタリング(APM)から始めることです。クラウドへの移行を成功させるためには何が必要で、IT チームは何をする必要があるかを、以下で詳しく見ていきましょう。

 

移行前

クラウドへの移行に着手する前に、APM をどの分野で重視して移行範囲の判断に使うかを定義しておくことが重要です。また、主要なベースラインメトリックを決めておけば、アプリケーションの健全性を把握するのにも役立ちます。

まずはアプリケーション パフォーマンスのベースラインを設定する

クラウドへの移行前にアプリケーション パフォーマンスのベースラインを設定しておかなければ、移行後に何が「改善」したのかを判断できないでしょう。したがって、パフォーマンスベースラインを今のうちに定義しておくことが極めて重要です。ビジネスにとって何が「改善」にあたるのかを判断することは、クラウドへの移行におけるパフォーマンス目標を決定するうえでも役立ちます。また、ベースラインを設定することで現在のパフォーマンスのボトルネックが明らかになるため、同じ問題がクラウドでも繰り返されないように計画することができます。さらに、アプリケーションレベルのトラフィックデータを分析すれば、クラウド内でのみ発生するトラフィックと、クラウドから外に出ていくトラフィック(つまり費用発生要素)を切り分けることもできます。

アプリケーション間の依存関係を把握する

アプリケーションを移行する前に、広範なアプリケーション エコシステムへの潜在的な影響を評価することが重要です。APM を使用すれば、アプリケーション間の依存関係を完全に可視化できるため、どのアプリをクラウドに移行すべきで、どのような影響が他のビジネス関連アプリに現れるかについても確実に把握できます。アプリケーションの中には相互に強い依存関係を持つものも少なくないため、そのようなアプリはオンプレミス環境の近くに残しておいたほうがよい場合もあります。

 

移行後

アプリケーションをクラウドに移行した後は、パフォーマンスとユニットエコノミクスが最大限に高まるよう最適化されていることを確認する必要があります。

可能な限り正確にサイジングする

私の経験では、たいていのお客様が過剰に多くのリソースをクラウド上でプロビジョニングしています。最近のプロジェクトで、あるお客様がデータベース用途でプロバイダーがあらかじめ用意したインスタンス構成の 1 つを選択したところ、パフォーマンスが予想を大きく下回っていたという事例がありました。その後、AppDynamics を APM ソリューションとして使い、そのインスタンス構成を調べたところ、データベースのようにメモリを大量に使用するアプリケーションよりも、コンピューティングリソースを大量に使用するアプリケーションに最適なことが判明しました。お客様は、この発見のおかげで別の構成に移行し、そのアプリケーションに適したリソースをより正確にサイジングできたのです。その結果、パフォーマンスが大幅に向上し、プロセスのサービスコストは 40% 削減されました。

クラウド サービス プロバイダーに責任を果たさせる

クラウドプロバイダーが契約の中で約束するのは、ユーザエクスペリエンスではなく SLA です。では、SLA が実際に達成されているかをどうすれば確認できるでしょうか?APM を使用すれば、サービスとエンドユーザのパフォーマンスを個別にモニタリングできます。その結果、料金の支払い額を正確に予想でき、プロバイダーが公約を果たしていない場合は責任を追求することもできます。

アプリケーションのリリース頻度を高める

クラウドに移行する最も大きなメリットの 1 つは、コンテナ化された環境でアプリケーションを実行できるため、リリースの頻度を容易に高められることです。ただし、コード中に間違った記述が 1 箇所あるだけで、アプリケーションのパフォーマンスは大きく低下する場合があります。APM ソリューションを導入してパフォーマンスを詳細にモニタリングしない限り、サービスのパフォーマンスがいつ、どのような理由で低下したのかを特定するのは困難です。

新しいスタック全体を迅速に修復する

クラウドに移行すると、アプリケーションの配信方法にも変更が必要になる場合があります。クラウドネイティブ バージョンのアプリケーションへの切り替え、データの取り込み量、さらにはセキュリティ対策が原因で、数多くの変化が同時に発生する場合もあります。変動要素が非常に多い場合、APM はパフォーマンスのボトルネックがいつどこで発生しているかを即座に確認するうえで不可欠なツールです。

最適なクラウドと適切なタイミングを見極める

アプリケーションの移行先は最終的なものではありません。アプリケーション パフォーマンスと経済性の観点から、現時点でのベストは Azure でも、将来的には AWS がよい、といった幅広い可能性が考えられます。パフォーマンスをプロアクティブに監視していない限り、何をビジネス上の契機としてアプリケーションを移行すべきかを判断することはできません。その結果、タイミングを逃してしまい、パフォーマンスや収益の向上による恩恵を逃す可能性さえあります。ハイブリッド化やマルチクラウド化を選択する組織が増えている中、ビジネスに最適なタイミングと条件でアプリケーションを移行するには、APM による現状の可視化が不可欠と言えます。

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Jan Elmelund Olsen 氏は、Sentia グループの Ymor 社でテクノロジーリーダーを務めています。AppDynamics を活用したマネージドサービスを専門とし、クラウドでのアプリケーションのプランニングと運用をサポートしています。

 

内田 雅彦

1985年に日本ディジタル・イクイップメント(現・日本ヒューレット・パッカード)に入社、1994年より日本オラクルでERP製品マーケティングディレクターを務め、2004年 加コグノス社の日本地区副社長、2006年 インフォマティカ・ジャパン 代表取締役社長 2010年 ヴォコレクト・ジャパン(現・ハネウェル・ジャパン)代表取締役社長を歴任の後、2014年 アップダイナミクス ジャパン合同会社 カントリーマネージャーに就任。2017年 シスコシステムズによる同社の買収を経て現在に至る。