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シスコのマルチクラウド戦略 – Intent-Based Data Center と Cisco HyperFlex を中心としたマルチクラウド プラットフォーム


2018年7月31日


現在、8〜9 割のお客様が複数のパブリック クラウドを利用し、ハイブリッド クラウド戦略を策定されようとしています。ただし「マルチクラウド」環境が最適化されて効率良く利用できているお客様は全体の 1 割程度に過ぎません。シスコはこの複雑かつ断片化されたマルチクラウド環境をシンプルかつセキュアに運用できる「Intent-Based Data Center」アーキテクチャ(図1)で課題を解決し、マルチクラウド環境をより積極的に活用できるようにすることによってお客様のデジタル化の加速をサポートしています。

図 1 : Intent-Based Data Center アーキテクチャ スタック

Intent-Based Data Center」の構成要素は、最新のプログラマブルなインフラストラクチャを実現する Cisco Nexus 9000 シリーズ、ハイパーコンバージド インフラストラクチャ(HCI)の Cisco HyperFlex(図 2)、さらに Cisco Unified Computing System(UCS)サーバがベースのインフラとして適用されます。そのインフラに対して、シスコのデータセンター SDN である Cisco Application Centric Infrastructure(ACI)による自動化や、Cisco Intersight のようにパブリック クラウドからサーバおよびストレージを管理し、プロアクティブな運用サポートを提供することによって、運用負荷を大幅削減します。また ACI は新たなパブリッククラウド エクステンション機能により、オンプレミス データセンターのみならず、パブリッククラウド上でも一貫したネットワーク、およびセキュリティ ポリシーを展開することが可能になります。

図 2 : Cisco HyperFlex:ハイパーコンバージド インフラ マルチクラウド プラットフォーム

オンプレミスにおいてもパブリッククラウド並みのシンプルさとスピードが求められている中で、HCI は非常に注目されているテクノロジー分野です。その中でも HyperFlex は、これまでサーバとストレージのみの統合によって設定運用作業負荷を削減していた旧世代の HCI とは異なり、ネットワーク、サーバ、ストレージの 3 層を統合、一元的に管理可能にすることにより、さらにシンプルに短時間でシステム展開を実現しています。リソース展開が早いだけではなく、他社の HCI  製品と比較して非常に高速な I/O パフォーマンス(詳しくは ホワイトペーパー をご覧ください)を誇ります。これにより、これまでは HCI の適用が難しかったデータベース、ERP、その他の高いトランザクション性能を必要とするアプリケーションでの HCI 利用も容易にし、さらにシステム全体での運用負荷削減を実現できます。

また、Cisco Container Platform(CCP)との組合せにより、Kubernetes の運用をオンプレミス環境で容易にし、HyperFlex の Flex Driver 経由でコンテナ向けの永続ストレージ サービスとコンテナ向けの高度な SDN 機能を ACI/Contiv を併用することで利用可能にします。特に Google とは Google Cloud とのハイブリッドクラウド アライアンスで協業(図 3)を深め、 2018 年 7 月 25 日に Google が発表した「Google Kubernetes Engine on Prem」に世界で一番最初に対応します。これは、Google Cloud 上でサービス展開されているコンテナ クラスタ管理の Google Kubernetes Engine と同じバージョンの Kubernetes をオンプレミス環境の HyperFlex 上の CCP で利用し、さらに Google の Apigee や Istio などのサービス メッシュ機能と連携することにより、シームレスなエンタープライズ アプリケーション、およびクラウド ネイティブ アプリケーションのハイブリッド クラウド活用をより高いレベルで実現します。

図 3 : Cisco と Google のハイブリッド クラウド アライアンス

より広範囲のマルチクラウドの管理には Cisco CloudCenter が活躍します。CloudCenter により、アプリケーションの実行環境をモデル化し、このモデルを対応パブリッククラウド間、またはプライベートクラウドで展開することにより、容易にマルチクラウドで同様のシステムを展開、削除、移動させることが可能になります。また CloudCenter のベンチマーク機能により、どのクラウドで対象アプリケーションを利用すれば、コストとパフォーマンスを最適化できるか簡単に比較することが可能です。特定のクラウド プロバイダーにロックインされることなく、日々変化する環境で常に最適な環境でアプリケーションを利用することができます。

Tetration Analytics(図 4)はマルチクラウド環境をエンドツーエンドで見える化し保護することが可能な多目的に利用できるアナリティクス ソリューションです。対象サーバにインストールするソフトウェア センサーか、Nexus 9000 シリーズに実装されているハードウェア センサーのどちらか、もしくは両方を利用することにより、対象デバイスの全トラフィックの全ヘッダ情報をビッグデータ インフラストラクチャに保存し、必要に応じてリアルタイムにアナリティクスすることができます。アプリケーションの相互依存関係の見える化、通信サービス レベルの監視、さらには ACI に移行するためのポリシー シミュレーションなども実トラフィックをベースに可能にしています。またフォレンジック、サーバのワークロード保護などのセキュリティ目的でも利用できます。新しく追加されたサーバのワークロード保護機能により、現在データセンターの 8 割以上のトラフィックを占めるサーバ間、プロセス間通信のトラフィック制御を実現します。従来はデータを収集し、リアルタイム アナリティクスを行うビッグデータ インフラストラクチャは専用アプライアンスのみの提供でしたが、新たにリリースした Tetration-V や Tetration SaaS によって導入オプションが広がっています。仮想アプライアンスの Tetration-V はオンプレミスかパブリック クラウドを問わず、HyperFlex を含む最低限必要な仮想サーバ リソースがあれば Tetration のビッグデータ アプライアンスとしての利用を可能にし、Tetration SaaSはお客様がビッグデータ インフラストラクチャ自体の管理をしなくても、ソフトウェア センサーとの組合せで諸々の Tetration の機能がより導入しやすくなっています。

図 4 : Cisco Tetration Analytics

もう 1 つのアナリティクス ソリューションとしては AppDynamics が挙げられます。アプリケーション パフォーマンス監視によるパフォーマンス劣化の迅速な原因特定機能をはじめ、オプションを組み合わせることによりビジネス パフォーマンスや  IT の投資対効果も見える化することができます。こちらも Tetration 同様にパブリック クラウドのワークロードもオンプレミスのワークロードも管理することができます。アプリケーションは AppDynamics で、インフラストラクチャは Tetration で管理することによりエンドツーエンドでマルチクラウドのシステム全体の状態をリアルタイムで把握し、問題の発見を迅速化します。

このように、オンプレミスでのインフラストラクチャの最適化、自動化はもちろん、マルチクラウド環境においても見える化とセキュリティを高度化し、一元的な管理ソリューションを提供することにより、これまで課題とされてきた複雑性、断片化、ブラックボックス化、脆弱なガバナンス、そしてセキュリティの問題を解決します。導入を始めるポイントはさまざまですが、例えば HyperFlex を中心にシスコのポートフォリオを生かしたマルチクラウド ソリューションスタックを描くと、図 5 のようになります。HyperFlex 単体の優位性はもちろんですが、HyperFlex に搭載、もしくは連携可能なシスコソリューションを HyperFlex と組み合わせることによって、よりシンプルな運用を実現しながらもマルチクラウド環境の新たな可能性を広げ、お客様がデジタル化を進める上でのインフラストラクチャの課題解決を実現いたします。

図 5 : Cisco HyperFlex を中心としたマルチクラウド プラットフォーム

Any Scale、Any Cloud、Any Appを広範囲で実現するシスコのマルチクラウド ソリューション、ぜひ今後もご注目ください。

 

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