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世界に羽ばたく Thor – 著作権使用料無料のビデオ コーデックを作り出すプロジェクト


2015年9月15日


Jonathan Rosenbergこの記事は、シスコ フェローであり、コラボレーション ビジネスの CTO でもある Jonathan Rosenberg によるブログ「World, Meet Thor – a Project to Hammer Out a Royalty Free Video Codecpopup_icon(2015/8/11)を意訳したものです。

ビデオ コーデックの分野では活発な研究開発が続けられています。インターネットで広く使用されている現行のビデオ コーデックは H.264 です。シスコは、Web 上のリアルタイム コミュニケーションの基盤として H.264 を積極的に推進してきました。今、次世代のコーデックが現れ始めています。特に、Google が独自に開発している VP9 コーデックと、H.264(AVC)の後継である業界標準コーデック H.265(HEVC)の 2 つが注目されています。

残念ながら、H.265 の特許ライセンスに関する状況は最近悪化しました。これまでに 2 つの異なる特許ライセンス プールが形成され、そのどちらにも属さないライセンス保有者が多数います。H.264 のライセンス プールは 1 つだけです。これら 2 つのプールから H.265 のライセンスを得るための総コストは、H.264 に比べて 1 単位あたり最大 16 倍高くなります。H.264 には年間ライセンス コストの上限がありましたが、H.265 にはこのような上限がありません。

そのライセンス条項によると、いかなる形であれ、オープン ソースまたは無料で配布されるソフトウェア アプリケーション(Web ブラウザなど)での H.265 の使用が禁止されています。また、WebEx や Cisco Spark などのフリーミアム製品(ユーザが無料で使用できるバージョンを含む製品)での使用も禁止されています。したがって、H.265 はシスコ テレプレゼンス ルーム システムなどのハードウェア製品に適しているとはいえ、ハードウェア/ソフトウェア両面で普遍的なビデオ コーデックになることはあり得ません。ですから業界は、どこででも利用できる高品質の次世代コーデックを必要としていると我々は考えています。

この目標を推進するために、このようなニーズを満たす新しいビデオ コーデックを作り出すプロジェクトを開始しました。これを「プロジェクト Thor」と呼んでいます。これに取り組むために、世界有数のコーデック専門家をスタッフとして迎え、その中には、これまでビデオ コーデックに大きく貢献してきた「レジェンド」とも言える Gisle Bjøntegaard 氏と Arild Fuldseth 氏も含まれています。また、このテクノロジー分野を熟知している特許専門の法律家とコンサルタントを採用しました。シスコが新しく作成したコーデック開発プロセスにより、この分野の膨大な数の特許を検討し、これらの特許を迂回または回避するようコーデックを進化させ続けることができます。シスコのこの取り組みはまだ完成にはほど遠いですが、世界にこれを公表する時が来たと感じました。

そして 2 週間前にプロジェクト Thor をコミュニティに公開しました。オープン ソース コードを http://thor-codec.org popup_iconでご覧いただけます。また、次世代の著作権使用料無料のビデオ コーデックの標準化への取り組みを始めた Internet Engineering Task Force(IETF)の NetVC ワークグループpopup_iconにも Thor を公開しました。Mozilla もこのグループに積極的に参加し、同じ目標に向けて(Daala という)テクノロジーを開発しています。より多くのテクノロジーがこの「大義」に貢献するほど、成功の可能性は高くなります。

シスコは今後何か月にもわたり Thor の開発を続け、特許分析を進めながらコーデックを進化させていきます。あなたもぜひ参加してください。コーデック開発への協力、特許分析への参加、あるいは特許権使用料無料を前提とした知的所有権の提供を募集しています。

ご参加を希望される個人または企業は、netvc-inquiry@cisco.com にご連絡ください。

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